西丹沢 鬼石沢 2026.5.15

あれは、2020年の夏。

ふと、いつも訪れている畦ヶ丸の綺麗な沢を歩いてみたいと思い、私は沢靴を購入した。

 

これで沢の中に入れるぞ!とウキウキしながら登山道沿いの浅い沢に足をつけてみる。それが物凄く爽快で、とても気持ちが良かったのを今でも鮮明に覚えている。その日は、平坦で穏やかな水辺をパシャパシャと歩き、岩に腰掛けてスケッチをした。

 

「沢歩き」にも満たない「沢足浸し」をしたあの日以来、買った沢靴は棚の奥でずっと眠っていたのだった。

 

 

 

畦ヶ丸の魅力はと言うと、山道沿いの沢の水が美しく、水辺に生える植物や水性生物など山の表情が豊かである事、下棚・本棚の滝が見事な点が挙げられる。そして、忘れてはいけないのは尾根上のシロヤシオとブナ林である。

 

以前、そんな話をWさんにしていたのもあって、鬼石沢から沢登りをして畦ヶ丸まで行こうという話になったのだった。

 

 

 

朝はなんだかパッとしない曇りだったが、1時間ほど歩き入渓地点の一軒屋避難小屋に到着した頃には、すっかり青空が広がっていた。

 

沢装備を準備し、いざ入渓!天気もいいし気温もちょうどいい。そして何より水の中を歩いているという高揚感がある。

 

 

 

しばらく緩やかな沢を歩くと滝が出てきた。遡行図では滝はFと表記するそうだ。

この滝はF2というらしい。F1はどこだ?と思ったがそれは入渓地点よりも下にあるとのことだった。

 

事前に滝を登るとは聞いていたが、結構大きくないか?これは大丈夫だろうか…とビビっていると、「じゃあ、ビレイお願いしまーす。」と言う声で登攀開始。Wさんが先にリードで登り、滝のやや右側を登って上部の木に支点を作ったら、いよいよ私が登る番である。

 

 

見上げた斜面には、苔が生えていているなぁ…湿った落ち葉で滑るかもしれないなぁ…と不安になる要素は幾らでもあるのだが、そんな気持ちで登る方が良くないので、落ち着いて一歩一歩足場を確かめながら登った。

 

ロープがなくてもスイスイ登る人もいるそうだが、少なくとも私には絶対に必要だ。

 

F2滝上部

 

 

少し歩くとすぐにF3。さっきの滝より大きい。

Wさんが支点をどこに取るか考えている間、その背後では、私はまた不安に駆られていた。ここもまずはWさんがリードで登る。左側から行く記録もあったが、我々は右から登った。

 

 

下の少し岩が茶色くなって濡れている所はスタンスも手もあって登れたのだが、中間地点の乾いた部分が一番怖かった。うっすらと下へ傾いていて、なめらかで岩に角が無い。手もガバが無い。(私にとってのガバは無い)

ぬめってはいないけれど、何かの拍子でスルンと滑るんじゃないかとヒヤヒヤしながら少しずつ前進する。

支点を回収する時に少し怖かったが、上からアドバイスを貰いつつ、なんとか落ちずに上まで抜ける事が出来た。(こ、怖ぇ〜…)

 

 

滝の上まで来てやっと、そこからの景色を楽しむ余裕が出てきたので、何枚か写真を撮った。

 

 

 

晴れていて風もそよそよ吹いている。水は澄んでいて花崗岩の岩が白くてとても綺麗だ。そして何より、どこもかしこも景色が良すぎる。

西丹沢の山は花崗岩で形成されており、それが明るく美しい沢を作り出しているとは知ってはいたが、今まで見ていた畦ヶ丸の風景とは比較にならないくらいの感動があった。

 

 

 

徐々に岩がゴロゴロからゴロンゴロンという感じで大きくなってきた。倒木も多々あるので乗り越えながら進む。

あと、ずっと木漏れ日が綺麗だ。

 

 

 

次に出てきた滝。いつもあるのかは分からないが、滝の中心に倒木が引っかかっていた。

木も利用しながら上手い事登ればいいのだが、私は苔むしている左側に寄った際に、一度ズルッと滑ってしまった。幸いロープを結んでいたので事なきを得たが、ヒヤッとした。

まだ、目視した時にどういうルート取りをするといいのか、どこに足を置けば安定しそうかなどよく分からないので、漠然と登るのではなく、そういう想定を出来るようにしたい。

 

滝上部

 

 

 

先ほどの滝を越えてからはしばらく綺麗なナメが続く。ゆったりしていて穏やかだ。

 

談笑しながら歩いていると、どこからともなくカエルの鳴き声がしてきた。どこだどこだ?と探してみるも、その姿は見えない。

途中、明らかに声が近くからしたので、耳を澄ましながらカエルが隠れている岩を特定したのだが、岩の裏側から出ては来てくれず…。

岩に近づいて「おーいおーい」と話しかけると、警戒されたのか鳴き声は一切聞こえなくなってしまった。

 

カエルに会いたかった

 

 

そうこうしているうちに巨大なチョックストーンが現れた!物凄く大きい。

「ズドーン! ゴローン! バーン!」というような感じで順番に落ちてきたのだろうか。

 

 

 

そして、いざ胎内潜りの巨岩の内部に入ってみると、これは結構難しい。足で突っ張りながら左半身を岩に押し付けたり、ヨイショーッ!と気合いで

乗り上げたりしながらやっと穴から顔が出る。

その後はお助けロープを使いつつ全身を引き上げて、ウーウーとうめき、お腹を岩に擦り付けながら必死になって這い上がった。

 

這い出してきた穴

 

その後に出てくる、堰堤の上の大岩もなかなかの迫力だ。また、この辺りから次第に水の気配は少なくなっていった。

 

 

巨岩の間を抜けて行く

 

 

 

縦型チョックストーン。両脇の壁にはイワタバコが群生していたので「イワタバコ ゾーン」だ。

 

Wさんはヒョイと登ったが、果たして私は…とまた不安がよぎる。しかし、堆積した流木に足を乗せてから長い流木に足を掛けると、グッと上へ行くことが出来た。

 

 

最後の巨岩が沢山あった枯れ滝?を越えて、畦ヶ丸への向かう斜面を登ると畦ヶ丸避難小屋の少し下の登山道に出た。

避難小屋にて一休みし、畦ヶ丸山頂へ向かう。何度も来ている山頂も、登山道ではなく沢登りでやって来たと思うと感動もひとしおであった。

 

 

 

大滝橋への下山路ではミツマタの群生地があった。一本一本の木が大きく立派で、きっと3月には沢山の黄色い花を咲かせているのだろう。

毎年ピークを逃してしまっているので、いつか満開のミツマタを見てみたい。

 

「ふ〜ん。これがミツマタの花が咲いた後のやつか〜」

 

 

 

 

 

訳も分からず沢靴を買ってから約6年が経ち、今回、念願の沢登りをする事が出来た。それによって以前よりは、本当の畦ヶ丸を内側から体感出来たような気がする。それがとても嬉しかった。

 

 

さて、近いうちに大好きな畦ヶ丸へと続く、この緑の谷を絵にしよう。