見上げると、もうすっかり夏の空だ。
気温は27度。深夜の東京から夜行バスでやってきた私には、少々眩しすぎる青である。

てくてく歩いて行くと雪渓が至る所に残り、目を楽しませてくれる。こちらもやはり冬の豪雪により、通常より雪解けが遅いとの事だった。
また、リフトを降りてすぐにこんな景色が見られるなんて!と感激しっぱなしである。


この日は姥沢からのスタートで、山形の皆さんとご一緒させて頂いたのだが、強い日差しに負けず皆さんとてもお元気である。
こちとら制作の為とは言え、ずっと引きこもって体力が落ち、鈍りきった身体には暑さがジワジワと効いてくるのがわかった。


所々で雪溶け水が小川を作り、勢いよく流れてくる。手を付けてみるとそれはそれは冷たかった。
高山植物達も一斉に顔を出して咲いている。「キャッホ〜イ!」と植物たちの楽しげな声が聞こえてくるような気がしてとてもいい気分だ。


ゼンマイ…?ではなく何かのシダ。グルグル。

こうやって見てみると、雪が溶けて間もない場所はまだ枯れ草や土の色だが、数日経つと新芽が出て緑が広がっていくのがわかる。
雪渓の白、雪が溶けた茶褐色の地表、芽吹いた淡い緑と成長した力強い緑。
この場所も、8月になったら殆ど緑に覆われているのだろうか。

そうこうしていると最初の雪渓地点までやってきた。遠くから見るよりも斜度がある。
皆さんすいすいと軽やかに行くのだが、私は以前雪渓でずっこけた経験がある為、物凄く慎重に登っていく事にした。
(足跡が付いていたので軽アイゼンなど無くても登りは大丈夫でした。)
その後も小さな雪渓を通過。




谷沿いに残る雪渓がいいライン

こうして歩きながら辺りを見渡していると、あまり角がない山であることがわかる。丸みを帯びた山容はどことなくどっしりと懐が大きいような気がした。


緑と白、遠くの山々は青みを帯びて空へと馴染んでいく様がとても美しい。

頂上へ向けて、強い日差しの中よいしょよいしょと登っていく…。これは周囲の景色が素晴らしいのと、励ましてくれる方々がいるおかげで頑張れているのである。


さて、ここは頂上小屋の少し下にある鳥居。もう少し登って、みんなで月山神社にてご祈祷をして頂いた。


小屋周辺でしばし休憩。
日差しは相変わらず強いが、サァーッと吹いてくる風は雪渓の上を通ってくるからか、冷たくて心地よい。
見渡せば、生き生きとした夏草が大きな生き物のようにサワサワと揺れ、ぽっかりと可愛らしい池塘には空が映っている。
そんな大好物な風景を堪能していた。


何か住んでいるのかな?





話によるとどうやら三角点はこの先にあるらしいのだが、ここに来るまでに気持ちが満たされていたので、そちらへは行かずムフフ…と笑いながら周辺を楽しく散策していた。

この下から吹き上がってくる風の気持ちのいいこと!

小屋から少し下の見晴らしがいい場所から眺めていると、霧がどんどん湧いてきた。一瞬で稜線は見えなくなっていく。
午後になって何だか雲行きが怪しそうな色の空に変わってきた。





帰りは行きに通らなかった姥ヶ岳経由で下山。
なだらかで気持ちのいい稜線の登場にテンションが上がり、曇ってきて気温もバッチリだ。そして全方向景色がいい。
吹き抜ける風を受け、ずっとこんな稜線歩きがしたい…と思う素敵な道であった。


ニッコウキスゲは咲き始め

来た道を振り返って


稜線の道が終わる頃、曇り空から草原に光が差して池塘がピカッと光っていた。
本当は近くへ行って中を覗いて見たいけれど、それはちょっと叶わない。だから絵の中で描こうと思う。