春、再び山形県飯豊町中津川を訪れた。
今回は、昨年滞在した作家2名の展覧会を中津川で開催出来るという事で、なんとも嬉しい限りである。
秋の滞在時に「春の雪解けの季節は水没林がとても綺麗だよ〜」と地元の方々から聞いていたので、それはそれは楽しみであった。
そして、赤湯からどんどん近づくにつれ、まだ出たてであろう淡い新芽と山肌の残雪が現れ始める。今年は豪雪の影響で、4月後半にも関わらず雪がかなり残っているとの事だった。
白川湖のほとりに降り立つと、春の光と強風で柳が揺れてとても綺麗だった。


初めて見た水没林はとても美しく不思議な空間だった。
秋に来た時には石だらけの河原だった場所が、こんなにも変化するとは…と驚きが隠せない。水の色はエメラルドグリーンとターコイズブルーブルーを混ぜたような色だ。

また、展示の準備と並行して、この季節の中津川の風景を作品に残したいという事でスケッチも行う。湖畔周辺をゆっくり散策し、写真を撮ったり絵を描いたりして過ごした。



更に、早朝のカヤックツアーにも参加させて頂いた。
一人用のカヤックという事でバランスを崩してひっくり返るのではないか…とヒヤヒヤしていたのだが、ガイドの皆さんのおかげもあり、最後まで無事に乗ることが出来た。
そんな状況だったので乗りながら優雅にスケッチ…とは行かず、この風景を眼球に焼き付けるんだ!とかなり必死であった。
湖に浮かびながら柳の樹々の隙間の水面を滑っていった景色は、湖岸から見る景色とは違った表情を見せてくれた。
寒暖差によって朝霧が発生し白黒のシルエットで見える樹々、また朝日に照らされてオレンジの光を受けた水没林、完全に日が昇ると霧は晴れ明瞭になった柳と水の色。それらも今後、新たな作品になるだろう。

展示準備の合間、秋にも散歩した場所へと向かう。宿の目の前にある神社にもまだ雪がたっぷりとあった。


おはようございます。春ですよ〜

水没林も時間帯によって水の色が変化する。晴れた日中だと色が鮮やかだ。



ここは私のお気に入りの場所、源流の森へと向かう橋から見た風景だ。
柳の木もまだ枝の隙間が見えてなんだか風通しがいい。同じ所とは思えない程、印象が違っていて驚いてしまった。
また、秋にはブンブンと飛び交っていたカメムシの姿も今は見えなかった。



数馬の森の前に佇む青いとんがり屋根のガレージ。
展示の準備中、小さな蜂などに混じって、見ないと思っていたアイツが現れた。カメムシだ。「なーんだ。やっぱりいたんじゃん。」と箒で外へ掃き出しながら、ほっこりした気持ちになる。
周辺ではカタクリの花が一斉に咲き始めており、風に揺れる草花と残雪とのコントラストが印象的だった。



小春日和の中、展示された作品を一人眺める。
冬に滞在した伊藤さんの作品と秋に滞在した自身の作品が同じ空間にある。それはここで生まれた作品が、季節を越えてまたこの飯豊町中津川へ帰って来たという事だ。
飯豊の森から素材を得て、滞在時のフィールドワークワークやインスピレーションを混ぜて作品制作を行う。それは、自然と対峙している作家の本来あるべき姿であり、大変に豊かな経験であったと改めて感じたのだった。

数馬の森散歩

水没林 スケッチ1

水没林 スケッチ2

スケッチ3
