急に爆裂火口が見たくなって、福島県にやってきた。
早朝の福島駅はまだ真っ暗。大きなトラックやタクシーが駅前のまばらにいるロータリーで、コンビニ買ったおにぎりを食べる。
始発まではかなり時間があるので、しばらくぼんやりしていた。

9月半ばとはいえ、絶賛残暑中である。東北は涼しいのではないかと期待していたがそんな事もなかった。
少し湿り気のある風を受けながら歩いていくと、真緑から赤へと葉の色が変化して少しずつ秋の気配が感じられた。

それにしても今日は風が強い。振り返ると眼下の雲が勢いよく流されていく。


よく整備された登山道を行くと、程なくして山頂が見えてきた。
よしよし…標高が上がるにつれて風は更に強くなってはきたが、まだ晴れ間が見えている。
しかし無情にも登りきった所にあった標識と写真を撮っているうちに、あっという間に青空は消え去ってしまったのだった。


どうやら山頂は標識の上の小高い岩の上らしいと聞き、せっかくここまで来たのだから…と恐る恐る登ってみる。
いつの間にか風は強風から暴風に変わり、誰かの帽子が吹き飛んで行った。


なぜだ。在来線とバスを乗り継いで登山口に着いた頃は晴れていた。登り始めも晴れていた。
有名な「この空が本当の空です」の標識を見た時も晴れていたのだ。
立っていられない程の爆風、山頂直下では皆、低姿勢で岩陰に隠れていた。おにぎりを口に押し込んでエネルギー補給をしてはみたが、こんな状況で稜線を歩いては危険と判断し、泣く泣く爆裂火口は諦めたのだった…。

爆風あの世

爆裂火口が見たくて、福島までやってきたのになぁ…としょんぼりとした気持ちで下山を開始。


中腹まで戻ってくると、行きで見た草紅葉と印象がなんだか違って見えた。霧の中にある植物や風景は、晴れている時とは異なる表情を見せてくれる。
この景色が見れただけでも良いのかもしれない。


完全な夏や、秋には見る事が出来ない秋の始まりが感じられた。







下まで降ってきたら、さっきまでの天気が嘘のように晴れてきた。これもよくある事である。
しかし、こればかりは仕方がないのだ。また来るよ〜安達太良山。