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東北 紅葉と秋の雨 会津磐梯山 2019.10.3

 

会津磐梯山に行ってきた。 

 

 

この山には、個人的な思い入れがある。

 

母方の祖父母は静岡で問屋を営んでおり、小学生だった私は長期の休みになると一人鈍行に飛び乗って祖父母の家に遊びに行っていた。

倉庫や事務所などがあるその家が、団地っ子の私には楽しくてしょうがなかったのだ。

 

そんな「おばあちゃん家」は私が住む集合住宅にはありえない構造をしており、え?なぜここにドアが…?という事もしばしば。

 

客間の押入れの奥には人が一人通れる狭い廊下があり、その突き当たりにはドアがある。

ギィィィ…と勇気を出して開けてみると、下へ続く階段が現れた。真っ暗な階段を降りると倉庫へと繋がっていたのだ。

 

中でも一番不思議なのは、二階のトイレだ。

ドアを開けるとすぐに洗面台がある。足元にはスリッパ。問題はそこからである。

 

便器が物凄く遠いのだ。

 

一歩、二歩、三歩……明らかにドアからの距離感がおかしかった。

長細い部屋の一番奥に便器があり、そこに座るとドアが遠い。構造上余った空間だったのだろうが、後にも先にも、あんなトイレに出会った事はない。

 

極め付けは、トイレのペーパーをカラカラカラ…と回すと、その反動でペーパーホルダー内のオルゴールから電子音の曲が流れ始める。

 

 

「ピーピーピ ピーピピ ピーピー  ピピピー  ピーピーピー」  

(あーいーず ばんだい さんはー たからーの やーまーよー)

  

そう、名曲 会津磐梯山である。

 

 

「おばあちゃん、この曲なーにー?」

「会津磐梯山よ〜。」

「へぇ〜。」

 

 

 

こうしてトイレットペーパーを回す度、私の脳に会津磐梯山は刻まれていったのだった。

 

 

 

 

 

【コースタイム】

 

裏磐梯スキー場登山口 7:56 - 銅沼 8:40 - お花畑 弘法清水分岐 10:30 - 弘法清水 10:45 (休憩)- 山頂 11:48 - 火口原 15:00 - 裏磐梯スキー場 16:28

 

登り始めは、裏磐梯スキー場登山口から。

当初は八方台登山口から登る予定だったが、山仲間が車を出してくれたおかげでここから登る事が出来た。

 

 

スキー場の脇を抜け、なだらかなゲレンデを登って行くと銅沼が見えてきた。

 

 

 

台風前の湿り気のある強風が吹くと水面がザァーッと動き、それに乗って硫黄の匂いがしてくる。

 

沼の向こうの斜面にはシューシューとガスが吹き出していて、この山は生きているんだと実感した。

 

 

ちょっとだけ逆さ磐梯山。

 

 

銅沼を通過してからは、樹林帯の中を歩く。

 

黄色く色付き始めた森を進んで行くと、所々に沢が流れている。そのせいか、足元はぬかるんでおりべちゃべちゃだ。10月だというのにまだ湿度が高くジメジメとしていた。

 

 

麓の森を抜け、少し標高が上がってくると山肌が紅葉しているのが見えた。葉の色がなんだか濃い気がする。

 

 

登山道の脇の楓が黄色くて眩しい。写真だと少し暗いが、肉眼で見るとものすごい発色だ。

 

 

11時前、弘法清水小屋に到着。外は風が強く、到着したと同時に予報通り雨降ってきたので小屋の中で休ませてもらう事にした。

 

名物のなめこ汁には、なめこと大きな麩が入っている。体が冷えていたので暖かい汁物がとても美味しかった。

 

 

小屋から山頂へ向かう道は抜けが良く、遠くまで見渡せる。眼下には紅葉と湖。

 

 

見上げれば、鮮やかに色付いた山肌だ。

 

 

正午前、磐梯山に到着した。風が強い。そして背景は真っ白であるが、そんなことは気にしない。

 

 

 

標識の写真を撮ったあと、小屋のおじさんに教えてもらった場所へ行ってみる事にした。山頂から少し下がった所に小さめの岩があり、そこからの景色が最高との事だった。

 

 

岩に近付くにつれ斜面が急になり、遠くには霧で霞んだ爆裂火口が見える。

 

 

 

左には断崖絶壁の爆裂火口、そして右には、色鮮やかな紅葉の山肌が広がっていたのだ。

「わぁ!」と思わず声が出た。

 

 

紅葉はカーブを描いてだんだんと下りていく。

 

こんなに綺麗な色付きを見たのは初めてだった。

もちろん丹沢の紅葉も綺麗なのだが、こんなに彩度が高い紅葉ではない。寒い地方の紅葉はより一層、綺麗なのかもしれない。

 

 

嘘みたいな発色の楓だが、本当にこの色をしている。色にくすみがない。

 

 

曇りでこの絶景。晴れていたらとんでもない景色だったのかもしれない。

 

何かこの紅葉の美しさを表現する言葉がないか、と探してみたのだが、今の私の文書力ではこれが限界であった。

やはり感動したものは、絵にする方が性に合っているようだ。

 

 

下山は同じ裏磐梯スキー場コースでピストンしようとしていたが、「火口コースが迫力があっていいよ、僕の一番のお気に入り。」と小屋のおじさんが言っていたのでルート確認をして、火口コースで帰る事にした。

 

火口コースは山と高原地図では破線ルートになっているからか、小屋から下った分岐の標識にはその表記がない。

行き着く先には裏磐梯登山口があるので、この標識に書かれていた裏磐梯方面へ進んでしまったが、間違いだった。

 

正解は分岐で小屋を背にして立ち、右でも左でもなく直進。よくよく見ると道があった。

急なガレ道を下りて行くと、黄金清水という水場がある。

 

濃霧と強風が吹き荒れる中、裏磐梯山の爆裂火口の稜線に出た。ちょっと風が強すぎだ。

 

 

風が強い場所だからか、植物が生えていても辛そうに見える。崩落している櫛ヶ峰は霧の中。

 

 

「あの岩、スフィンクスと小さいモアイに見えるね」と仲間が言うので見てみると、切れ落ちた地層の上にポンとそれはいた。

 

「本当だ!よし、撮るぞ」とカメラを構えると体が持っていかれそうになり、ヒヤヒヤした。

 

 

漂うあの世感。

 

 

崩れ落ちた土石が、様々な色を見せてくれる。一口に茶色と言っても多種多様だ。

 

 

火口の稜線から高度を下げていくとやがて、森の中へ入っていく。

森の中の急斜面にはU字の鉄でできた手すりが設置されているのだが、これがあってもなかなか体勢がきつかった。

落ち葉に隠れた地面はザレていて、ズルッと滑りそうになる。歩き方が下手なのはわかっているのだが。

 

下りも後半に差し掛かった頃、突然、ゴオオオオ……!と得体の知れない轟音がした。

雷?飛行機?と話していると、長く鳴り続いた最後にゴロゴロ…パラパラ……と石が転がる音。崩落だ。

あんなに大きな音がするんだと驚きつつ、とても恐ろしくなった。

 

 

 

やっと森を抜けると火口原に出た。上から転げ落ちてきたであろう大きな岩が沢山体積している。

破線ルートだからなのか、標識が壊れていたり、文字が全く見えなかったりしていてここからは進むのに難儀した。

 

 

迷わないようにロープが張ってあり、結局それを進んで森の中を行けば裏磐梯スキー場に出たのだが、そうすると川上登山口方面の道はどこにあったのだろうか。

とにかく冒険感満載のコースで楽しかった。

 

 

トイレットペーパーのオルゴールから始まった、会津磐梯山。今回の山行で30年越しの夢が叶ってとても嬉しかった。

 

また次回は、晴れの日に行こう。