台風12号が接近してくる隙をみて、初めての南アルプス 鳳凰三山を縦走してきた。今回の山行は、前回に引き続きテン泊装備。
ザックの中身は水を入れて大体12kgくらいでしょうか。(体重計に乗って引き算したのでおおよそ。)
35-105mmレンズが重いので、それを単焦点レンズのみにすればもう少し軽くなるはず。
【コースタイム】
7/26(木) 夜叉神峠登山口 10:45 - 夜叉神峠 11:45 - 杖立峠 13:55 - 苺平 16:05 - 南御室小屋 16:45(泊)
7/27(金) 南御室小屋 6:15 - 薬師岳 7:55 - 観音岳 8:50 - 地蔵岳 11:00 - 鳳凰小屋 12:00 - 12:45 - 燕頭山 14:52 - 御座石鉱泉 17:35
甲府駅から広河原行きのバスは満員だったが、夜叉神峠登山口で降りたのは私ともう一方だけだった。
バスを降りてすぐの所にある、夜叉神峠登山口からスタート。
登山口から、夜叉神峠までは樹林帯の中を1時間ほど。道も整備されているのでとても歩きやすいがとにかく暑かった。
汗をダラダラと流しながら、夜叉神峠到着した。先は長いので、ここでお昼ご飯に。
晴れてはいるけれど、雲も多いお天気。
夜叉神峠までとは違い、時折涼しい風が吹いて気持ちがいい。
葉と幹の茶色が綺麗だな、と写真を撮りながら進んだ。きつい上りはこの辺まででそのあとは緩やかに高度を上げていく印象だった。
南御室小屋までの登山道は、概ねずっとこんな感じ。
やっと杖立峠に到着。約2時間の道のりは、景色が変わらないので長い行程が余計に長く感じた。
しかし、ここから苺平までも2時間かかる。
スペイシーな木。ただならぬ力を感じながら通過…。
1時間くらい前にも、同じような構図で撮ったんじゃないかと思う。
少し明るくなってきた。
焼け跡を通過した辺りで、何やら不思議な鳴き声が聞こえてくる。
何だろう?と思って振り返ると、一匹のホシガラスだった。しとしきり鳴いて何処かへ飛んでいってしまった。
この辺りは一旦樹林帯から抜けて開けているのだが、日差しを遮るものがなく重い荷物を背負った体には少し堪えた。
ふと見上げると青空が見えてきた。でも暑い。
やっと苺平に到着した。苺は見当たらない。
ああ、早く小屋に行ってのんびりしたい…。
この後の道で小屋の看板が所々に登場し、元気付けられた。ここから南御室小屋までは緩やかな下りだ。
南御室小屋 到着。
そういえば、小屋に着くまでの森で「ギュウゥ……」という変な声が聞こえた事はもう忘れてしまおう。
登山口から一緒のルートだったお兄さんは既に到着しており、あー!着きましたね!としばし談笑。
おじさん方にはどれくらい重いんだ?とザックを持たれたり、そのカメラはフィルムか?など、そこにいた皆さんとも楽しくおしゃべりした。
夏休みとはいえ、平日だったのでテン場は5張りほど。一番奥に張った。
設営完了、前よりはマシだろう。
この日は20時前には就寝。
7/27 2日目 朝4:30起床。
のんびりとご飯を作ったりしていたら、いつの間にか時間が経ってしまい6時過ぎに出発した。
小屋からはいきなり上りだが、朝の光が木々の隙間から差してくる道は気持ちがいい。
でも、とにかく早く稜線に出たかった。
だんだんと岩が増えてきた。足元の土はホロホロと崩れやすい。
雰囲気が変わって来た。きっともうすぐ稜線だ!
出たー!
広大な雲海の中、ぽっかりと富士山が浮かんでいた。
前方には、これから向かう薬師岳と観音岳の稜線が見えている。一気に疲れが吹っ飛ぶ眺めに、一人ニヤニヤが止まらない。
最高だ。
小屋から時間差で出ていた4人組の方々が、とっても楽しそうに登っていく。
所々でお話をして、こちらまで楽しい気持ちになった。
いまだかつて、こんな両日共に晴れた山行があっただろうか。晴れても片方だけ…なんて事ばかりだったので本当に嬉しかった。
岩陰でひっそりと咲く、タカネビランジ。
薄いピンクのものや少し濃いめのものもあったが、個体差があるのだろうか。
時刻は7時過ぎ。稜線上は日差しが強い。雲海を見ながら、薬師岳へ。
見えてきた。それにしても岩が大きい!
巨岩と這松の格好良さよ。
真っ青な空を背景に、この景色はどこを切り取っても絵になる。
7:55 薬師岳に到着。
本当に来て良かった。この稜線を歩ける清々しさったらありません。
雲海ももくもくと一面に。
山並みも美しい。
景色が素晴らしすぎていい気分で、観音岳に向かった。
岩が崩れて白砂になった稜線は照り返しが強く、サングラスなしでは眩しくて歩けない。
雲ひとつない青空に向かっていくような道。
白、灰色、緑、青。こりゃあ、私の好きな色じゃないか…。最高である。
振り返って見えた富士山は、上に雲がうっすらとかかり始めていてグラデーションになっていた。
8:50 観音岳到着。
観音岳から見る地蔵岳は荒々しくもあり、白と緑のコントラストがとても綺麗だった。
観音岳山頂の岩に登っている誰もが、幸せそうな顔をしていた。
動画で自撮りをしているおじいちゃん、関西弁のおばちゃんたち、元気なおじさんグループ。
そりゃあ、こんな景色見たら笑顔になるよなぁ。
オベリスクは、ここからでもすごい存在感。
しかし、一つ気がかりなのはあの砂の斜面を下るのか…という事だ。斜度がすごい…。
さあ、いよいよ地蔵岳に向けて出発。
上ったり下ったりを繰り返し徐々に地蔵岳に近づいていくのですが、どうにも暑い為、速度が上がらない。
そんな中、一緒のルートで来ていた方たちと自然と声を掛け合いながら登った。
ひいひい言いながらも、景色は絶景なので写真を撮り続けた。
しかし、この辺りから雲が出てきてしまった。
バランス!
オベリスクがかなり大きく見え始めた。もう少しだ。
地蔵岳到着。
なんだ…あの形は…と、しばらく見入ってしまいました。
下の方からは段々とガスが湧いてきて、さっきまでの青空はどこへやら。
お地蔵様の後ろからも、もくもくと雲が湧き上がっていく。とても荘厳な、そして力を感じさせる雰囲気だ。
さらば、地蔵岳。
私はこの恐ろしい斜度の砂地を下らなければならない。
ルートが途中から一緒だった、女性二人組の方たちが颯爽と下っていきます。早い…!
うそでしょ?と思うくらい早い。後でまたお会いしたので聞いた所、富士山の砂地で慣れてるのよ〜!と笑顔で仰っていた。
踏み跡がある所をしっかりと踏ん張って下れば問題はないんですが、小心者なのでゆっくりと慎重に下った。
斜度が写真だとあまり伝わらないが、かなりきつい。
そして、登ってくる方たちは、皆さん苦虫を潰したような表情である。
こんにちはーと挨拶をしながら、ここは絶対に上りで使わないようにしようと心に決めた。
12:00 無事に鳳凰小屋に到着。
豊富な湧き水に歓喜し、お昼休憩も兼ねてしばし休憩させていただいた。
小屋のスタッフの方々が楽しくてついつい長居してしまった…。ありがとうございました!今度は泊まりたい。
ここから、御座石鉱泉までどんどん下っていくのだが、疲労が溜まっていたのか速度が上がらなくなってきてしまった。
「燕頭山からの道は急だから気をつけてね」という途中まで同じルートだったおじさんの言った言葉通り、段々と下りの斜面は急になってくるようだった。というか、ずっと激下りだ。3時間以上下り続けている為、膝が壊れるんじゃないかと思うくらい。
バスの時間に間に合わない、と少し急ぎめで下っていましたが、ここは安全第一で進むことにした。
あと、もう少しで御座石鉱泉だと歯を食いしばって進んでいると、左側の斜面の方からガサガサガサッ!!!と大きな物音が。
さっきも鹿に会ったし、どうせまた鹿だろうと音がした方を見ると、黒い…。
黒い…?
完全に熊だった。
その距離40〜50mくらいだっただろうか。肉眼で、はっきり熊と認識できる距離です。木に掴まって、じいぃ…とこちらを見ている。
私が付けていた熊鈴の音に驚いて木に登ったようだった。
前方から来たら後ずさりするのは知っているけれど、左にいる時はどうするんだ…とりあえず「熊ごめん、熊ごめん…」と心の中で唱えながら、刺激しないように静かに進むしかなかった。
そもそも、こんな夕刻に差し掛かる時間帯に下山している私が悪いのである。(上の写真に熊はいません。)
やっとの思いで御座石鉱泉に到着して、おじさんとおばあちゃんの顔を見た時は本当にホッとして、へなへなと地面に座り込んでしまった。
熊に遭遇したことを話すと、「珍しいねぇ、最近は見てないんだよ〜。」と笑っていた。
お風呂に入るとそこには鳳凰小屋まで一緒だった、名古屋からの女性二人が。
「思ったより時間がかかっちゃったわぁ〜」と下山後の疲れと汗を流し、その後お二人はビールをグビッと飲んでいた。
御座石のおばあちゃんは電車の時間を調べてくれたり、「ほら、これ食べな〜!」と、スモモをむいて出してくれた。
このスモモが美味しくて美味しくて。
おじさん、おばあちゃんありがとうございました。
そのあとは、名古屋からのお二人と三人仲良く割り勘で駅まで向かい、帰路についた。
今回の反省点は、二日目の朝もっと早出するべきだったこと。テン泊装備を背負った私の歩く速度では、遅くとも5時には出た方が良かった。
早発ち、早着き。登山の基本もう一度見直し、次の山に活かしたいと思う。
そして、この山行で出会った方々は皆さんいい人だった。
またいつかどこかの山で。